GOLDEN NIGHTが好きすぎてつらい

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オタクの記録と考察

映画「スモールフット」がめちゃくちゃ良かった(※ネタバレあり)

映画「スモールフット」観に行きましたか?

wwws.warnerbros.co.jp

 

この作品、プロモーションが弱くてテレビや映画でのCMも見たことがないうえに、推しが出るということすら公開されるちょっと前になって突然知った、というくらい認知度が低い。プロモーションと言えるプロモーションはおそらく動画くらい。

話題になってたのはこれですね。


映画『スモールフット』本編映像(ミュージッククリップ宮野真守ver.)【HD】2018年10月12日(金)公開

ただその動画のインパクトは大きくて、内容はほぼ知らないけど「これは行かねばならんやつ……」っていう使命感だけはめちゃくちゃ植え付けられました。だからわたしも映画館に足を運んだのですが!

 

行ってきました。

これ、ほんっっっっっと〜〜〜〜〜に良かったので、公開されてから3日目に観て衝撃のあまり我慢できずにふせったーで書き散らしたんですが、公開から2週間経ったしそろそろブログにも残そうかなと……。

宮野さんがよくお仕事をもらってるこれ系の海外アニメーション作品ですが、わたし個人の好みで言うと正直そんなに何回も観たいと思える作品がなくて。おもしろいけど1回観れたらいいかな、みたいな。逆にグサグサ刺さるのが「亜人」系のああいうやつ…(原作もコンプリートブルーレイボックスも買いました)。なので、ほんとにそこは好みの問題なんですけどね。

というのもあって正直あんまり内容には期待しないで観に行ったんですが、良い意味で期待を裏切られ、その後の数日間はスモールフットロスに…。

ビジュアルから受ける印象の100倍くらい、実は社会派なメッセージ性がたっくさんつまった作品でした。映画館出てすぐそこになんで円盤予約の申し込み用紙を置いてくれなかったんだ!円盤はいつ出るんだ!って思うくらい、また観たくなる作品でした。円盤出たら買います………。

 

 

そんなに何が良かったのか、という感想をここからズラズラ書き残していきます。結構がっつりネタバレしていくので、観に行く予定がある人は読まないほうが吉かもです。

 

あらすじ

巨大なモンスターみたいな見た目のキャラが主人公のミーゴ(イエティと呼ばれる種族)で、彼らイエティは雲の上の雪山で村を作って生活してる。そこには細かいルールがあって、みんなそのルールがどうしてあるのか本当の理由を知らずに暮らしてる。ただそれに従っていれば平和に暮らせると信じている中で育つから、その教えに対して疑問を抱くこと自体がNGだという雰囲気が村全体にある。

 

その教えっていうのはいろいろあるけど、映画を観ている側(わたしたち人間)からしたら意味がよく分からないものばかり。これは映画の中で明かされる秘密が関係してるんだけど、それは一旦置いとく。その教えのひとつに、自分たちの住む雲の下は何もない空っぽの空間だとか、スモールフット(=人間のことなんだけど)という存在しない伝説の生き物の言い伝えがある。

 

ある日、雪山の端っこに飛行機で不時着した人間をミーゴが見つけて、その特徴がスモールフットまんまだったから「教えでは存在しないって言ってたけど、スモールフットって現実にいるんだ!」と気付く。仲間のところにそれを言いに行くけど、そのスモールフットが風に飛ばされて雪山の下に消えてしまったから、証拠がなくて誰も信じてくれない。

 

嘘つき呼ばわりされたミーゴは村から追い出されることになるけれど、ひっそりと村の中でもルールに対して疑問を抱き続けているグループに仲間に入れてもらって、スモールフットを探し出すことで嘘つきの汚名を返上しようとする。意を決して雪山を降りるとそこには山や街があって、「雲の下には何もないって教えも嘘だったんだ!」と気付く。

 

そこから宮野さんが吹き替えをしてるキャラ・パーシーと出会って、スモールフットの存在を証明するために故郷に連れて帰るけれど、村の長(教えを広めている張本人)から「昔は下界で人間とエイティが共存して暮らしてたけど、イエティを恐れた人間に攻撃されてこの山に逃れてきたという歴史がある。二度と同じことが起きないよう、下界と切り離すために村の教えを作った。村のルールはこの種族を守るために必要な嘘だ」という主旨の秘密を打ち明けられる。

 

それを知ったミーゴは真実を話すことのリスクに気付いて、村のためと「パーシーはスモールフットじゃない、勘違いだった」と話すけど、誰も見向きをしなくなってしまった。そんな中でパーシーが高山病になってどんどん弱っていくのを見たミーチー(スモールフットの存在を密かに追い続けていた仲間)が、パーシーを下界に帰すために山をこっそりと降りる。それを知ったミーゴは再び下界へ降りるけど、ミーチーが人間に攻撃されて……

というかんじのお話でした。肝になる部分まで書いたら長くなってしまいました。

 

悪役がいない作品

道徳的にすごく良い題材の映画だったなという印象が強いんですが、一番は悪役がひとりもいなかったということに尽きます。ちょっと考え方がズルかったり誠実でないキャラも最初はいるけど、基本的にはみんな善人で、平和や仲間を大事に想ってるキャラばかりなんですよ。

どんな作品にも起承転結があるものは多くの場合「悪役」にあたる人物がいて、分かりやすい悪役像だと世界征服を企んでいるとか、人類滅亡のために化学兵器をばらまくとか(デスノートかな)……そういう行き過ぎた悪の心を持っている人物がいる作品って少なくないと思います。でもそういう場合って、もちろんその悪役はその人の中に持っている正義に従ってそういう行動を取っている場合もありますが、たいていの視聴者には理解できない思想だし、「悪役」っていうレッテルを貼るための悪役であるように見える。「悪役だから」悪いことを企むし、「悪役だから」醜く映るべき、みたいな。無意識に「だって悪役だから」で済ましてしまって、その行動の真意を汲み取るところまで気持ちがたどり着かない。

でもこの作品にはそういう悪役らしい悪役がいないんですよね。みんな願うことは種族の平和や安全な生活だけど、それを守るための手段や考え方はぶつかることだってある。ミーゴは真実を知ったうえで未来を決めたい、村を執り仕切る者の立場からすると余計な恐怖は知らずに平和な暮らしを守りたい。そうなったときにどうやって解決するか?どう行動していくか?

こうやって主旨を汲み取っていくと日常生活にも同じような場面はいっぱいあるし、映画を観終わった頃には自分の生活をちょっと思い返してみたり、なんだかストンとリアルに落ちてきたような感覚がするすごい映画でした。ここがただ「エンタメとしておもしろい」以上のおもしろさを出していた作品だと思います。

 

案外グサグサ刺してくるセリフがいっぱい

基本的にはプロモーション動画の通りコミカルに描かれるんですが、社会という沼に足を取られる人間にはすごーくドキッとするセリフが散りばめられていました。

教えの秘密を知ったミーゴが、少し前までは楽しく気楽に生きてきたのにと落ち込むんですが、「無知は楽だった」とか「知識があるって複雑だ」とこぼすシーン。さらっと言うけど深いセリフだなと思った。知らないことは楽、その気持ちが分かって初めてストーンキーパー(今更名前出しますが村の長です)と対等に話ができるようになるんですよね。少なくとも無知であるうちはみんな平和だったんです。でもミーゴのように疑問を持つ者が現れた途端に崩れかけるような、すごく脆いものでもあります。

実際にそうやって疑問を胸の奥に沈めることにしたミーゴの父親は、ミーゴに対して「考えないことに麻痺しちまった、でもそれもじきに慣れる」というような、ちょっとドキッとするセリフをぶっこんでくる。

物語の核となる部分では、従来から存在するルールに対して何の疑問も持たずに生きることへの危機感みたいなものをそれとなく伝えてくる作品だったのも、作り方がうまい映画だと思った理由のひとつでした。

 

最後には「これからどうするかはみんなで考えよう」という方針で固まりましたが、村のイエティたちにも歴史を説明したうえで、再びイエティ総出で下界に降りてきて人間と交流しようとしてたのはちょっとびっくりしたけど(笑)めっちゃ攻撃されてたのにそんな無防備でええんかい〜!と思わなくはなかったんですが、最後くらいエンタメ中のエンタメみたいな終わり方じゃないとスッキリしないしね!

主に人間に攻撃されていたミーチーがしっかり理解のあるキャラで、「私たちの方が何倍も大きいから怖がらせちゃってるのよ!」ってスモールフット側の思考に歩み寄ってくれるキャラだったのも大きいと思います。わたしだったら多分下界に降りるか降りないかで一生迷ってるあのちっちゃいキャラになってるから……。

 

真実を隠すか、残すかの対比

なんだかこれも印象に残ってるんですが、追い出された側の種族であるイエティたちは真実を隠したうえで平和を保つ道を選び、追い出した側すなわち戦に勝利した人間たちは歴史を資料として残して生活しているというなんとも人間くさい対比もリアルだったなあ…。戦は勝った方が正義になる、みたいな考えのセリフか何かをドキュメンタリーか何かのアニメで見聞きした記憶があるんですが、まさにそれに通ずるものを感じました。

このアニメでは異種族間の問題として描かれていますが、種族が一緒でも十分起こり得ることっていうリアルなメッセージ。まさかこんなかわいいビジュアルの映画でこんなこと考えさせられるとは思わなかったなあ〜。

 

内容も素晴らしかったけど、宮野さんも素晴らしかった

めちゃくちゃ宮野さんハマリ役だった!!!!!

この作品、このキャストで良かったありがとう〜〜〜!例のプロモーション動画から受ける印象とクオリティそのままで全編ずっと続きました。テンションの話ではなく出来が良かった。最近よくある主人公やヒロインの枠に俳優さんを持ってくるタイプの映画、手法としてはアリなんだろうなとは思うんですが、こういう海外もののアニメーション作品だとやっぱり声優さんが演じるクオリティの高さを感じるし、付け焼き刃の声の演技じゃこの仕上がりはできないだろうなと思いました。

ちなみにわたしのお気に入りシーンがこれ。このスマホに向かってリポートするパーシーがめちゃくちゃ好きです(笑)


宮野真守演じるキャラが必死!アニメ映画『スモールフット』命がけのリポートシーン公開

この作品はミュージカル映画の枠に入るんですかね?何枠…?宮野さんだけじゃなく他の主要キャストさんのミュージカルシーンもすっっっごく良くて、映画館の音質で聴けて良かったな…。

 

しかしプロモーション不足なのが残念

内容がこれだけ良かった反面、プロモーション不足すぎてこの映画大丈夫か…と思ったのも事実。ヒットするしない以前に、映画の存在すら声優を追っかけてる人しか知らないのではレベルでプロモーションが弱い。

宮野さん、海外アニメーション作品の吹き替えはいろいろお仕事もらってると思うけど、個人的には一番おもしろかったと思うくらいには好きな映画でした。ざっとツイート検索しても評判は良いので、口コミで広がってほしいしヒットしてほしい〜!

 

以上、映画「スモールフット」の感想でした!